怪談社 ~あやしの国の鬼たち~
怪談社 ~あやしの国の鬼たち~
2016年9月30日 インタビュー:花房観音 写真:花房観音 場所:大阪・十三にて
――介護士と彫師……普通なら、接点がなさそうなふたりが出会ったのは、2007年に大阪の日本橋で開かれた竹内義和さんの怪談会とお聞きしたんですが。
紙舞「イベント終わって帰ろうとしたら、怖い人がいて……こっち来いって呼んでるんだけど、僕じゃないだろって思いながらきょろきょろして……そしたら『自分、おもろいな』って名刺渡されたんです」
――第一印象は、やはり怖かったんですね。
紙舞「めちゃくちゃ怖かった。びびりました。だから半年間連絡しなかった」
――紗那さんは、なんで紙舞さんに声かけたんですか。やはり語りが上手かったから?
紗那「上手やな、と思った。俺、才のあるだろう子が好きやねん。こいつとからんだらおもしろいなって思った」
――紗那さんはその時は、ひとりで怪談やってたんですか。
紗那「中山市朗(新耳袋の著者のひとり)の怪談イベントの手伝いしてた時期かな」
――それだけびびって、なんでまた半年後に紙舞さんは紗那さんに連絡しようと思ったんですか。
紙舞「名刺の整理してたんですよ。いつか連絡しなきゃなとずっと心にはひっかかってた。それでおそるおそる、いろんな言い訳しながら連絡しました」
紗那「違うんちゃう? 名刺の整理じゃなくて、何かのイベントで名前を見たとか言ってた気がする。お前の情報、曖昧やねん」
紙舞「あんまり覚えてないかも」
――それからふたりで飲みに行って親しくなったとか?
紗那「それはもっと先の話。何回かイベントやって……ちょこちょこ仲良くなって飲みにいくようなったかな。その時、こいつが一緒にやろうと持ちかけてきた」
――紙舞さんの方が持ちかけてきたんですか。
紙舞「僕が舞い上がってテンションが高くなって、何かやりましょうよ! って言った記憶が……」
紗那「こいつの間違いのはじまりや」
――間違いのはじまり……。
紗那「その時は、気合が入ってたね。それまでアホみたいな話をしてて、こいつあんまり話聞いてないなーって思ってたら、一大決心みたいな感じで、もちかけてきた。あるやん、なんか、ちょっと男前やったらさ、一番男前みたいなことを周りに言われて、それはその狭い一角だけの一番なんやけど、世界を察してしまうヤツ。その当時、よくこいつの口から、僕は声がいいねといわれるのでーって話の頭に出てくんねん。ナルシストやから。声がいいといわれるので、どうしたらいいんですかねーって」
紙舞「人生に迷ってたというふうにしといてください!!」
紗那「その時、こいつの中に、ちょっと見返したい感がなんかあったんじゃないかなと見てて思った。そんな話はしたことないけどな、興味ないから」
紙舞「それはちょっとありましたね、さすがですね。それまでやってきた活動に限界を感じてて……あと、喋ることがおもしろいなって思うようになったから、何かしたかったんです」
――紙舞さんの語りは、どこかで習ったことはあるんですか。
紙舞「それはないですね。滑舌良くしようと思って練習したことがあるぐらいです」
――最初に紙舞さんの語りを聴いたとき、演劇を観ているような感覚でした。
紗那「怪談社は、語りは紙舞で、企画構成は俺やから。俺のほうが偉そうなイメージがあるけど、言いだしっぺも語りもこいつや」
――怪談社って名前はそのまんまで、わかりやすいんですけど、どちらが考えたんですか。
紗那「俺やな。いくつか言うてたけどな、百鬼繚乱とか、こいつ(紙舞)が」
――怪談社のイベントは舞台要素が強いですね。音楽、演出、照明が凝っている。また、それが箱(場所)に合ってる。紗那さんが構成や演出されているということなんですが、舞台経験などはあるんですか。
紗那「それはないな。でも演劇と映画は好き」
紙舞「紗那さんと映画の話をしていると、このシーンのこの絵の見せ方が上手いって、創り手側の感想なんですよね。それが蓄積されて舞台にいかされてるんじゃないですかね」
紗那「どうなんやろなぁ。ただ、怪談社のイベントは毎回テーマを持ってやってるんやけど、いっこやりたいことは……このシーンだけ見せたいなってのがある。それを他の要素で埋めていく作業かな。例えば今やってる『BASARA』シリーズは、最初に曲が流れて、ライトがついて、ずらっと演者が登場するシーン、そこが見せたくて、それに合わせてつくる。そやから竜頭蛇尾にならざるをえないんやけど、それが好きやねん。基本的に最後ダメな方が好きだし、その方が不思議と話が残る。全てがよかったら、どれがよかったっけになっちゃう」
――あと、今回の大江能楽堂とか、五条楽園歌舞練場、和光寺、とか、場所ありきの怪談イベントかなとも思うんです。すごく雰囲気があるところをセレクトされてるから。
紗那「それはめっちゃ重視してる。だから、場所を探すのに散々足を運んではいるよ」